美城常務に関して思うことを書き連ねてみた

 アニメアイドルマスターシンデレラガールズ、2ndシーズンもとうとう大詰めとなってきました。23話も放送され残すところあと24と最終話のみ。24放送されました、あと最終話だけだと...。しかものんびりしてたら放送直前、そんな自分はまだ23話とかも見てません(現在時点で22が最新)早く見たいっす...。

 さて、先日書いたシンデレラガールズの記事などについて少し反応をいただけまして。「この間のシンデレラの記事面白かった」「ああいうので良かったら他にも美城常務についてのネタとかもある」なんて会話をしていたら友人が興味を持っていただけまして。実は案外需要あるかな?と思い立ち自分なりに書き連ねた次第です。

 内容が内容ですので当然未視聴の方などはお気を付けください。また書いてる期間が長期に渡っているため文章が編集した結果つぎはぎだらけとかもありうるのでそういうときはごめんなさい。

 また今となっては今更な記事かもしれません。でもなるべく読んで時間を損させないよう頑張ります。

 

 アニメ2ndシーズンから登場した美城常務。白紙宣言で、シンデレラプロジェクトの子たちを含め成長してきたアイドルの笑顔を散らしてしまい、またそれでいて正しさや圧倒感も併せ持つような存在という印象でした。アイドルがシンデレラだとすれば、さしずめ彼女はおとぎ話に出てくる悪い魔女。アイドルたちを惑わし、それでいて彼女は否定できないような力を持っています。

 しかしその魔女の素性は謎に包まれています。

 ならばこそ疑問が生じます。「果たして彼女は悪なのか?」また彼女の言う狙いは?また彼女自身は何者なのか?そしてその発言の真意は?。

 本記事では「彼女の役割とは」、「彼女の目的やその意図、具体性」に関して切り込んでいきたいと思います。

 めちゃくちゃ長くなったので要点を総括として後ろの方にまとめてあります。

 

  • 美城常務の役割

 最初に断り書きをしておくと、常務に関しては漠然としたイメージや印象が持てているならそれでOKなのではないかと思っています。

 「何か切れ者やカリスマ、やり手であるという印象がある」、「彼女のやろうとしていることはアイドルの笑顔を摘む行為であり、反目する存在である」、「それでいて彼女のいうことにも正しさがあるようである」

 この三点、ないし前者二点でもイメージが持てているのであればまったく問題ないと思います。ぶっちゃけてしまえばそれさえ分かるならこの記事を積極的に読む必然性はありません。という断り書きを入れた上で続けさせていただきます。

 

 メタい部分から話をしますと、1stシーズンが終わってまだ半分尺があるわけですので、ストーリーの中だるみを防ぎなおかつ後半の目標になる存在が常務なのだと思います。またアイドルを窮地に立たせる存在でもありますので、カタルシスを作るためにも必要でしょう。彼女は必要悪、倒されるべき壁といった印象です。険しい道をたどってきたからこそ、山頂から見る景色は美しい。ロープウェイで山頂に登り見た夕焼けでは感慨が薄いのと同じで。

 あと主張から考えて、シンデレラガールズの”個性”というコンセプトを根底から否定する、ラスボスめいた存在という部分もあるでしょうか。こういった部分があるためある種の敵対存在として見られるので、敵(?)として割り切って考えられるのも視聴者には優しいかもしれませんね。さて話がそれました。

 キャラクターも多く複数のドラマを描く都合上、どうしても常務へのアプローチは少なくなります。そういう時間的な面もあるので彼女のキャラクター性のバックボーンは結果や発言からしか想像することはできません。逆に言えば、上記のようなイメージさえ掴んでいれば見れるような作りになっているように思います。また掴めるように要所要所とっかかりがあります。

 落ち着いた声、カリスマ的と言えばいいのかオーラと言えばいいのか近寄りがたい雰囲気、またアイドルたちの反応からも視聴者にとっての常務イメージを膨らませるための反応は出ています。2ndシーズン開始時に常務がシンデレラプロジェクトを視察した際の未央たちの反応がそれでしょうか。

 会長の娘、海外から帰国してきた、 未央の言う「クールでできる女って感じ」など。断片的ながらも彼女のイメージを支えるパーツは散りばめてあります。

 

 しかし以上のように作中で発せられたものだけでは、常務の考えや行動はふわふわしたもの...また単にアイドルを窮地に陥れるためのハリボテのように感じてしまうこともあるのかなと感じています。何せ時間も割けませんし、彼女の発言も「非効率、成果」を中心としたリピートが多くなっています。

 では、彼女の言葉は薄いものなのか?私はそうは思いません。 

 彼女の言動を支えるための柱とは何か。

 

  • 美城常務の狙い

  1.アイドルを取り巻く現状

 彼女の役割以上に今更な部分ではありますけど、彼女の言動について書いていこうと思います。

 常務の目的や目指すものは何度も作中で繰り返されています。まず「今のアイドルの個性に合わせて企画を立てていたのでは結果が出せない」などに代表される成果を出し続けられるアイドルです。端的に言ってしまえばお金を稼ぎ続けられるアイドル。文章で書けばあっけないほどシンプルです、しかしそれは言葉以上に重い。

 なぜお金を稼ぐアイドル...つまりは、人気のアイドルを育てるのか、またお金や人気など数字への拘りがそこまで強いのか。それに関しては後述していきます。

 それより先にまず、現状の音楽(CD)の売れ行きと、アイドル(芸能?)業というものについて述べたいと思います。

 

 アイドルと言えば、みんなが振り返る美貌、別世界の人、素敵な衣装など色々なイメージがあるかと思います。その中でもアイドルと外せないもので、歌があります。素敵な歌声、キラキラした音楽、甘く時にほろ苦い歌詞...世にはたくさんの音楽が溢れています。そしてそれはアイドル以外にも様々なアーティストが歌を出しています。シングル、アルバム、ダウンロード販売...形式や媒体は様々。では、それが今どれほど売れているのか。

一般社団法人 日本レコード協会|各種統計

 これは日本レコード協会が出している、年度別のCDのミリオンセラーの統計データです。古いデータと新しいデータを見比べてみれば一発で分かります。音楽、こと円盤は今は売れていないんです。

 00年代後半からは数年シングルがミリオンを記録しない年が続き、シングルが息を吹き返してきた思ったら某人気巨大アイドルグループがそこからミリオンの半分以上を占めていくような状況です。逆に彼女たちや往年の名バンド以外はほとんどミリオンセールなんて夢のまた夢です。

 音楽は売れない...それはつまりバンドなどのアーティストも含め芸能界の音楽面での衰退を意味しています。音楽は個人で出しているものからメジャー・インディーズのレーベルと契約している人もいます。しかし人の目に触れるもののほうが売れやすいのは必然です。テレビなど含め、メディア露出がある人のほうが売れやすいのは当たり前、従って芸能人やメジャーレーベル所属のアーティストが売れやすい。しかし、テレビに出る彼ら(彼女たち)でも売れない。

 さらにアイドル業は余計に競合相手との競争が強い印象を受けます。その印象が正しければ、某グループを始めたくさんのアイドルが群雄割拠するこのアイドル戦国時代...確かに「アイドルみんなの個性を大事に」というのは、美城常務の言うように非効率的なように受け取れなくもない。

 そんな状況でアイドル、昔のようなアイドル(偶像)足りえる存在を作ろうとしている常務の考えは、シンデレラプロジェクトたちとは相反していながらも一つのアイドルの完成形であるように思えます。

 とはいえ、逆に考えれば「色んな個性的なアイドルが出ている」という現状は、見る側としては大変にうれしいものです。しかしそれは全部が全部うれしいことではありません。

 一人の趣味人間として色々な人や音楽などに出会える可能性は確かにうれしい...そう、ただ見る側としては。次は創出する側、いってみれば常務の側になって書き出してみましょう。

 

  2.お金と人気

 次に、常務の企画の具体性について述べたいと思います。

 どんなものであれ、この世に出るものはお金がかかります。有形無形を問わずコストがかかる、その分が回収できない...またはそのコストをかけるだけにリターンが薄いコンテンツは消えやすくなります。必然です、アイドルがいくらファンに楽しんでもらうのがお仕事といっても、慈善事業ではないのですから。

 つまるところ、売れないものはなくなります。逆を言えば、売れれば続くのです。

 

 自分の得意分野が漫画ですので、漫画で説明させていただきます。この売れるものを第一とするスタイルを終始一貫して貫いていて何よりも分かりやすいのが、集英社より刊行されている週刊少年ジャンプです。「アンケート至上主義」をとり、人気連載は継続を、不人気の連載は打ち切りという徹底した方針をとっています。

 身も蓋もない言い方をすれば「売れるものにはもっと稼いでもらう」、「売れないものにはさっさとどいてもらう」という方針です。

 人気ということはそれだけ集客が見込めるということです、また不人気ということはお金をかけても戻ってくる可能性が薄いということでもあります。「人気の作品は続く」と「売れる作品は続く」はほぼ同義です。つまるところ「売れる≒人気」なわけです。

 売り上げという面以外でも人気な作品を続けさせるというのは意味があります。一つ大きな人気作品があればそれだけで広告になるからです。圧倒的な知名度はそれだけで多大な影響をもたらす。ジャンプという雑誌で今何を連載してるか知らない、好きな(読んでいた)連載がない人でも日本人でワンピースを知らないということはないでしょう。ワンピースファンは多い、そして多くは立ち読み(ないし購読)をしていることでしょう。雑誌を手に取るということは、他の作品を目にする機会にもなります。しかも、お金がかからない。

 知名度の高いもの、売れるものがあるとそれだけ有利ですし、時には一本大きな人気コンテンツがないとつぶれるときもあります。

 

 以上の内容は漫画についての言及です。しかしまったく同じことが美城グループを取り巻く現状でも言えるのではないかと私は考えています。

 ジャンプと美城グループの共通点は「その業界の後発組であること」、また違っている点としては「広告塔となれるほどの人気コンテンツを保有してるかどうか」という二点が挙げられます。

 ジャンプは今でこそ三大(四大)少年誌のトップを飾る漫画業界を代表する雑誌です。しかし創刊自体は遅く、出た当初はサンデーやマガジンの後塵を拝している状況でした。

 美城も同様に他アイドル事務所より遅く業界に参入しています。根拠としては17話「Where does this road lead to?」(凸レーションと美嘉姉の話)の冒頭部分でのシンデレラプロジェクト部長と常務のやり取りからです。部長はここで常務に対して「わが社にアイドル部門ができてまだ数年」と諭しています。

 また補強材料としては、どの話か忘れたんですけど、CDショップに765信号機トリオの生っすかPOPがあったこと、駅ナカの広告にjupiterやDSのディアリースターズの面々がいたことも挙げられるのではないかと思います。

 目立つところの広告の占有ができていない、そしてアイドル部門ができて数年...ここから読み取れるのは、

  • 他アイドル事務所やアイドルが競合相手として存在している
  • その相手たちとはまだ競り合っている状況である
  • 美城グループはその硬直状態を打開するほど人気があるアイドルを現状保有していない(育ったアイドルがそうなる可能性はある)

 以上の三点かと思います。

 この状況は、新規参入してきた側としてはおいしくありません。簡単に言ってしまえば相手に食われるという可能性があるからです。力が拮抗しているのですから当然といえば当然です。

 しかし逆に言えば、相手を食えるかもしれないという可能性でもある。常務の狙いはそこにあります。

 15話冒頭での「対外的な美城のイメージアップ」はここにかかる言葉ではないでしょうか、またここで「私の企画に合うものだけを選抜する」とも言っています。プロジェクトクローネの示唆でもあります。個性のあるアイドルがたくさん、言い換えてしまえれば失礼な話、玉石混交ともいえるわけです。石ころと宝石の原石の区別がつかない中で、磨けば光る存在だけを集めて打ち出せばどうなるか。言うまでもないかと思います。

 大きなコンテンツが一つでもあれば変わる、ジャンプは超巨大はコンテンツをいつでも一つ以上持ち続けてきました、その結果ライバルたちを抜きいま業界の名を飾るほどのトップにいるわけです。常務もそれを目指したのではないでしょうか。

 また15話冒頭を見ていれば漠然としていながらも「常務は精鋭だけで何か一大プロジェクトをやろうとしているのだろう」と分かるのではないかと思います。見れば分かるものをここまで書き連ねてしまったとすると、ちょっとくどかったかもしれませんね。

 おそらく、美城の世界も、そしてたぶん現実世界も、奇しくもアイドル戦国時代。その中で天下、一騎当千を目指した常務の狙い...自分は以上のように感じ考えました。

 

  • 余談

 常務の発言の具体性についてはひとまず終わりまして、個人的な憶測を。

 売れないものは続かない、前述したようにこれは必然です。では売れないものに存在価値がないかと言えばそれはNOです。自分自身あまり売れないけどこの作者さん大好き!このバンド大好き!というのは数多くあります。

 ただ、それらは売れなければ、どんなに情熱や熱意やコンテンツのポテンシャルがあっても、打ち切らざるを得ないのです。作り出す側としてもお金を払う側としてもどうしようもない事実で、また悲しいものです。

 しかし一つ飛びぬけたコンテンツが超稼いでくれれば、他を安心して成長させる余裕ができる。

 憶測なのですけど、美城常務を見ていると「今まで会社としても辞めさせたくない、アイドルとしても辞めたくないのに、引退せざるを得なかったアイドルたち」というのを彼女は数多く見てきたような気がしてならないんです。

 この数年、漫画ファンとして、連載どころか雑誌がバンバン消えていく様子を目の当たりにしてきました。あのジャンプ(集英社)でも消えた雑誌はここ数年でいくつかあります。しかしあの集英社が雑誌を休刊・廃刊しているという事実を知らない人も多いのではないかと思います。

 そういった「人に見向きもされない悲劇たち」を、常務は見てきたように感じます。芸能界は漫画など以上に飽きられたり、変化が激しいところのように思えるので猶更この悲劇たちは多いのではないのかと邪推する次第です。

 売れなければどうしようもない、逆に売れれば(また他が稼いでくれれば)チャンスはいくらでもある。自分がこの一冊を速報に乗る形で買わなければ打ち切られるという漫画などを見てきた人間としては、やはりお金...売り上げは何物にも代えがたく、それこそ”先立つもの”であります。お金がないとやれるものもやれない、お金があるとやれる幅が広がる。ないと続くものも続かない。

 お金、成果を重視している常務はクールなイメージもある中で、稼ぐことでアイドルたちを悲しませないようにという思いがあるのではないかと感じてしまいます。徹底した成果主義を貫いているように見える常務の目の奥には、そんな決意を感じてなりません。

 

  • 総括

 随分長くなりましたので要点だけ。

 美城常務の役割に関して。端的に言ってしまえば「アイドルたちの前に立ちはだかる壁」でしょうか。現状アイドルたち(ことデビューしたてのCPのみんな)の短所である成果(=多くの人に楽しんでもらうなど)ということをある意味で指摘した存在であり、作品コンセプトを足元から崩すような存在。なので目の前に立ちはだかるそりたつ壁のような存在だと思います。

 美城常務の発言の具体性に関して。「コンテンツが持続していくためのサイクルを確立しようとしている」ということになるでしょうか。お金がなければ始まらない、お金がなくなったら終わってしまうのが世の常ですから。慈善事業ではないので、会社として、上役として当然の判断でもあります。また打ち切られていくマイナーコンテンツを見てきた人間としてはむしろ好感触と言えます。まぁ、ちょっとやりすぎなきらいがあるので全肯定とはいきませんけど。

 

 以上が自分の感じた常務についてです。気付いたら最終話配信直前も直前になってしまった今更記事でした。

 

 

 P.S.

 シンデレラ3rdライブは両日参加考えてます。シンデレラの舞踏会でお会いしましょう。