アルジャーノンに花束をのドラマ感想

 昨年死去されたダニエル・キイスの名著、「アルジャーノンに花束を」を原作とするドアラマ。主演はNEWSの山下智久さん(通称山P、で良かったんでしたっけ)。

 アルジャーノンに花束をのドラマ化ではありますが、日本の人に向けた再構成バージョンと言ったところでしょうか。もちろん舞台や登場人物は日本人、それでいて原作の要素はしっかり踏襲しており原作を損なうことなく映像化できているのではないかと。

 骨組みは同じであれ、肉のつき方が違う作品に仕上がっています。なので今回は原作との違い、ドラマの長所短所などを個人的に書いていけたらと。

 私自身ドラマには明るくないですし、芸能人の方も多くは知りませんので、キャストの話は全てカットで。

 

 ドラマ版と原作の相違点

 本当であればドラマのあらすじを書くところなんですけど、あまりに難しいので割愛。なぜかと言えばドラマのアルジャーノンは群像劇に近い側面を持つからです。

 原作であれば主人公(あちらはチャーリィ・ゴードン)の一人称、主人公の経過報告という形で進みます。文章形態ということもあり内面変化の描写は主人公のみで事足ります。視点が一つで十分。

 しかしドラマ版は映像作品ということもあり様々な側面から主人公への切り込みが入ります、キャラクターのやり取りで内面の差異を表現するしかない以上仕方のないことでしょう。

 登場キャラクターは多く、また陣営と言ったらいいのか勢力と言ったらいいのか、所属の違う人物グループが複数あり本当にキャラクターが多いです。その中でも注目すべきキャラクターはそう多くないようですが、それでも7人ほどは人間関係を把握しなければならないでしょう。

 群像劇だとしても、人が多いだけなら問題はない。問題は各々の思惑や人間関係までも描写される(=今後の展開に関係がある)ことです。主人公と誰かのやり取りではなく、誰かと誰かと主人公という三者関係になるのではないかと。

 要約すれば二点、人が多い、視点がコロコロと入れ替わるという要素のため群像劇に近い訳です。ここが大きく小説と違います。

 

ドラマのここが素晴らしい

1.人物の一貫性

 登場人物、キャラクター、彼らには今までの経験が時間として内包されています。ン十年生きてるのがほとんどですから、二十年なら二十年分の思い出や経験が積み重なりその人間を為します。

 特に主人公の内包する時間は行動の端々から感じられ、また行動に一貫性があります。

 フィクションと感じさせないリアリティにこれは一役買っているのではないかと。

2.小道具の使い方

 本ドラマには小道具(物であったり、事象であったり)が出てきます。登場人物たちの何気ない言動や行動、アイテムなどの活かし方がいちいち憎いのです。

 ある行動一つで人間性を表し、また今後の伏線になり...一度で二度美味しいという贅沢な構成となっています。

 こう言った魅せ方が大好きな人間としては、これだけでもうお腹いっぱいです。しかも出てくるもの出てくるものをすべて活用して回るのでなんとも手の込んだ作品ですよ。

 

 現在の段階では二話までしか出ておらず(筆者自身は一話までしか見てない)、今後どのような結末になるかも不明です。主人公がどのような結末になるかも見どころですね。

 

ドラマの惜しいところ

 ドラマなので一時間尺という長尺の映像作品、群像劇のため視点の転換が多く行われるため盛り上がりの波に掴まりにくい印象を受けました。

 そもそも自分自身が三十分尺に慣れた人間だったのと、ドラマを見るのが本当に久しぶりだったのもあり少々中だるみを感じました。

 逆を言えばそんなドラマ素人でも中だるみを超えて十分に楽しむことができたと言う事もできるのではないでしょうか。

 

総評

 原作を尊重した上で日本向けに作りなおしている、良い実写化であると思います。キャストも豪華(だと耳にした)ですし、構成も良い、これは期待して良いドラマではないかと。

 人によっては少々見るには根気のいるものですが、そのために努力するのも悪くはないのかなと。

 

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自分が読んだのはこの表紙の奴でした。

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

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アルジャーノンに花束を〔愛蔵版〕

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