今年の漫画たち

ここ数年、ある人たちに混ぜて頂いてその年ごとに「今年の面白かったフレッシュな漫画を持ち寄って紹介しよう!」という企画に参加させて頂いてます。去年で自分が参加して三年目か四年目、企画全体としては五年目だったように思います、たぶん。

それでたぶん今年も皆で持ち寄ると思います。それで今年の要注目の漫画を今年始めから四月初旬段階のものでリストアップしたいと思います。

今年新刊でも去年の話題に挙がったもの(ex.ヒーローアカデミア、実は私は、魔法使いの嫁)や、何かの賞に去年輝いて耳目を集めた(ex.乙嫁語り)などは除外します。もちろんすでに結構巻数が出ているものも選外です。

 

BIRDMEN 1 (少年サンデーコミックス)

BIRDMEN 1 (少年サンデーコミックス)

 

 退屈な日常を過ごしていた中学生の烏丸は今日も自分に、人に、この日常に鬱屈としながらもだらだらと生きていた。

ある日親友の鴨田と学校をサボり海浜公園へと出向いた帰り、公園で知り合った主人公たち四人を乗せたバスは大事故に遭う。運転士は即死、乗っていた四人の命も風前の灯火だった。しかしその時、何者かが彼らの前に降り立った。彼らが見たものとは―?

退屈な日常から一転した彼らの非日常、知られざる秘密の溢れる青春×SFジュブナイル

 

あのサンデーは送り出してきた刺客は結界師田辺イエロウ先生の新連載。

読んだ感想としてはじっくりと楽しむ漫画という感じでしょうか、決してジェットコースターのようなスピード感はありませんがサンデーらしく手堅い漫画となっています。

敵と言ったらよいのか、そういう存在もあり何かの専門機関?なども存在しているようなのですけど、肝心の敵と遭遇するのは一巻最後、怪しい機関の目的や規模だって三巻まで読みましたけど未だに不明。

主人公烏丸のモノローグも多く、少年誌によくあるアクションが派手な漫画などでは決してありません。むしろ繊細は思春期の内面を描いたり、大人でもない子どもでもない彼らの成長、葛藤、または単に馬鹿やって楽しそうな様子を見守るような漫画でしょうか。

こう言った点を加味すると決して誰にでも勧めやすいという漫画ではありませんが、高年齢層にとってはありがたい漫画なのではないかと思います。

あーだこーだと真面目にばかばかしく時におっかなびっくりチャレンジする彼らの物語はまさに青春ジュブナイルなのではないかと。少年誌に飽いた方にこそ読んでほしい一品です。

 

朝霧の巫女の作者、宇河弘樹先生の新連載はソ連占領下にある日本を舞台に、亜人である猫たちの冒険活劇。

表紙の夜梅は三味線弾き(贄女)であり盲目の猫、また彼女と同道するは卍の錫杖を携えた夜梅と同じく猫の少女の鶯。

お天道様のあたる道から少し外れたところで巻き起こる猫たちの物語。

 

いやー中々面白かったです。しかし今年一番の癖の強い漫画でもありますね。なにせ宇河先生の和風ファンタジー?ですから。

朝霧の巫女を読まれた方は分かるかと思います。巫女ものの皮を被った伝記ものの肉を付けた性癖漫画(すっげぇ失礼)でしたし。しかしそんな宇河弘樹先生の今回の新連載、比較ではありますが大変読みやすいです。

主人公たちの目的がはっきりしており、話の中で次は何をするとかどこにいくとか、展開が明文化されています。それでいて初っ端から飛ばしてはいるものの、ギャグも入っておりデフォルメなども要所要所入れてくるので緩急が付いており大変楽しませて頂きました。

まぁ、最初はよく分からないと思いますけど、「主人公たちサイド」「敵対サイド」「第三勢力?その他?の人たち」という見方をしていれば問題ないです。朝霧後半みたいに元のネタを知らないと分からないということはありませんし、説明もしっかりありますので。

しかし宇河先生、やはり和物は強いですね。元より線でがりがりと描いて頂けるので質感の自由度が違います。肥大化した筋肉から流れるような艶のある髪まで、あの極上の筆致で描かれる物語は一読の価値ありです。

女性、少年、男性と書き分けもうまいですし、宇河先生の女性は今回も大変美人で、少年は溌剌と、男性はいかつく、キャラクターのデザインと言ったらいいのか、そういう場所にも魅力があります。

特に夜梅を始めとする贄女たち、盲目の子も多く(それしかいないんだっけ、うろ覚え)大抵は目を瞑っています。その目が!女性たちが!なんと美しいことか!

少々アクの強い作品ですが、今年何があろうと絶対に面白かった漫画に挙がるであろう作品だと思います。

 

正直めっちゃ話題になりましたし売り切れ続出したくらいなので今更ですけど今年要注目なので念のため。

最近流行りのファンタジー世界の日常を描く...言うなれば日常ファンタジーのジャンル筆頭株ですね。

ダンジョンに潜ってドラゴンの腹の中にいる仲間が消化しきられる前に助け出そう!あとドラゴン食おう!みたいな感じのストーリー。

時間の猶予もないけど金も食料もない...じゃあダンジョンに出る魔物食べながら進んだらいんじゃね!?という感じで魔物を食べるという前人未到のことをしていくことに。

ファンタジー生物の調理法や味、生態などに切り込むので、ノリは一ヶ月一万円生活みたいなもんだと思ってください。

普通に面白かったですし、人にも勧めやすい漫画ですね。今なら在庫も復活してますし、ぜひぜひ。

一時期一ヶ月くらい入荷しなかったので本当入手に骨が折れました。

 

亜人ちゃんは語りたい(1) (ヤンマガKCスペシャル)

亜人ちゃんは語りたい(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 

 ヤンマガサードの初単行本だそうで、おめでたい。

お話はこっちの日常世界にいる亜人ちゃん(ヴァンパイアとか)と主人公の交流物語です、学校が一応舞台ですね。表紙の子が制服を着ていて犬歯を見せているのはそういうため。

これも今流行りの日常ファンタジーのジャンル。しかしダンジョン飯とは違い、作者の熱量やポテンシャルにかなり左右されるタイプかと。しかしご安心めされ...めっちゃ面白いですしかわいいので!

ノリは軽く、絵柄も柔らかく話もテンポよく進むギャグ漫画で、ダンジョン飯以上に人に勧めやすい漫画ですね。

個人的にはデュラハンの町が好きです、めっちょ可愛いので...(これしか言えなくなる)

次は九月に単行本が出るらしいので楽しみですね。ヤンマガサードはこれからもドンドン独特なものを出していってほしい、雑誌も単行本も期待の作品であります。

 

ポチクロ 1 (ジャンプコミックス)

ポチクロ 1 (ジャンプコミックス)

 

 今年!絶対!マストバイ!な!単行本!松本直也先生のポチクロ!

もう何が言いたいってこれだけですよ、「面白いから単行本を買え!!!!!」買う勇気がないのであれば「公式で読めるから読め!!!!!」

面白い、絶対面白いの一言。

この作者さん、赤マルジャンプ2006SUMMERの読み切りの時からずーっと連載待ってましたよ...連載が去年開始なので八年、単行本だけなら九年近く待ち続けました。

単行本が出たので一巻分はすでに公式で公開終了してますけど三話まで読めるのでぜひ。

古き良き月刊少年誌のノリを受け継いでくれている稀有な連載です。

 

  • 九十九の満月/小雨大豆(ニコニコ静画)
九十九の満月(1) (シリウスKC)

九十九の満月(1) (シリウスKC)

 
九十九の満月(2) (シリウスKC)

九十九の満月(2) (シリウスKC)

 

 オリジナル妖怪漫画の鬼才小雨大豆先生のニコニコ静画公式の連載漫画ですね。

少々独特な世界観や雰囲気ではありますが、コロコロと転がるように気持ちの良いギャグや独創的な妖怪にキャラクターたちは自分の心をがっちり掴んで離しません。

これに関しても単行本化を待ちましたね。連載開始が三年前でずーっと追ってたんですけど中々単行本にならなくて。

「まさか単行本になるのが三年後とは!」って作者さんも言ってましたけど「こっちもびっくりだよ!」って感じです。

ニコニコ静画の公式漫画の所で一巻分はまるっと読めるはずです。

残念なのは元々動画形式でマンガを読み進められるというのが売りだっただけに、紙では音楽やらテンポやらが少々元と違ってしまうことですね。これはこれで楽しいですし、デジタルにかなり寄り添う形で作られていて出来は大変いいです。

逆に言えばあの独特なデジタル漫画の配信形式にマッチングさせてきた小雨先生の適応能力たるや相当なものだと思います。

続巻はまだ未定ですが、作者曰くもう連載してるのだけで20巻いくよ!とのことで。

馬鹿野郎そんなん出たら全部買うに決まってるだろなので講談社さん早く単行本化お願いします作者さんお体にお気を付けて...。

大好きな作者さんの大好きな作品なのでこれはぜひぜひ。

 

 あのゲッサンからは今作が商業デビューになるのでしょうか、門司先生のアイドルマスターミリオンライブのコミカライズ。

しかしコミカライズ、初作品だからと侮ることなかれ。私家出版で十二分に下積みを積んでいて上手い先生であります。

シンデレラガールズが今メディア展開していることもあり、アイドルマスター十周年でさらに連載はあのゲッサンで連載は別名義では中々名の通った作家...十分な追い風を受けただでさえ期待できるというのにもっともっと高く飛ぶであろう一作です。

しかも、この作品...自分が知る限りでは初の一巻から特別版が出るという異例な待遇!

通常、特別版は売れている、売れると見込まれた作品から出ると思うんですよ。去年あれだけ騒がれ、一躍ブレイドの人気作家であり時の人となった「魔法使いの嫁」のヤマザキコレ先生。当時で40万部だかいったと思います。

しかしあの作品、まほよめであっても特別版は三巻からでした。しかもラバーストラップでの。

今回のミリマス特別版はCD!765プロの名曲をカバーし、更に先生書き下ろしシナリオでの身にボイスドラマも収録!

本音を言えば自分も特別版が欲しかったです...でも、でもお金が...!

ぜひ、財布に余裕がある方は特別版を、そうでない方はぜひ通常版をお買い求め頂けると良いかと。

コミカライズは関連メディアミックスとの抱き合わせなどが多いと思います。さらに正直に言えば、今まで読んだコミカライズで良いと思えるものはそう多くないです。

しかし単独メディア展開、異例の一巻からCDが特別版で出るという事態。そうあることではありません、それをするだけの何かがあるということ。

もちろん中身は大変面白かったです、面白くない訳がない!

続きが待ちきれない一冊でもありました。

 

少々長くなりましたが、今年出たもので限っても、まだ今年は半分だって過ぎていないのにこれだけあります。今回選外として出さなかったものを合わせてもかなーり豊作な年となっています。

去年一昨年と、漫画業界は休刊ラッシュ、連載終了ラッシュでした。しかし今その穴を埋める...いや埋めるなんて失礼ですね、新しい風を生みだそうとたくさんの漫画が生まれています。

今年は、とても良い漫画の年になりそうです。

 

読んだもので面白いもの、これなんてどうよ!なんてものがあればぜひ教えて頂ければと思います。